オーバーホールとは?

オーバーホール(Overhaul )は時計専門の言葉ではありません。車やバイク等あらゆる機械に必要な一式のメンテナンスをひっくるめてオーバーホールと呼んでいます。なので、物によって違うのは、もちろん時計でも機能の多さ、複雑さやデザインによってもその内容は変わります。一口に言えないのがオーバーホールの難しさの一つです。

時計のオーバーホールは主に内部のムーブメントに対しての点検作業を言います。逆にベルトやケースなどの外装部分についてはオーバーホールではあえて触れないメーカーが多いです。

オーバーホールはなぜ必要?

オーバーホールは簡単に言えば点検です。時計の歯車を動かしている油は時間と共に気化していきますし、埃を集めてしまいます。結果、歯車の動きを悪くして必要以上の負荷がかかってしまい部品の寿命が短くなります。それが全ての部品に対して起こるので、必然的に時計全体の寿命を縮めてしまいます。

また、オーバーホールを定期的に行うことで、使っている本人でも気付かないような初期症状のトラブルを発見できます。壊れてから直すのは壊れる前に直すよりも手間も金額もかかります。

オーバーホールはどんなことをする?

時計のオーバーホールでは、主にムーブメントの点検を行います。ムーブメントを分解、洗浄、組み立て、注油を行います。部品ごとにネジを外しムーブメントをバラバラにしていきます。

基本的には初めて触る機械ではないはずですが、メーカー以外で修理を行っていた可能性も含めて慎重に分解していきます。(その場合は保障の対象外になるため)組み立てている途中にもザラマワシといって、途中まで組上がった状態で歯車の繋がりを何度も確認します。交換が必要な歯車があればこの時に交換します。

オーバーホールではしないことは?

オーバーホールをして欲しいとのお客さんからの要望であれば、ムーブメントについてはすべてチェックをします。しかしムーブメント以外の外装部分については依頼がなければ何もしないメーカーがほとんどです。

具体的にはベルトの交換、ベルトを留めているバネ棒のチェック、ケース・ボタンに付いている汚れ・キズの洗浄や研磨については依頼なしでは行いません。バネ棒一本替えるのにも料金が発生するメーカーがほとんどです。また、汚れについては拭けば簡単に取れる程度なら拭いてくれるメーカーもありますがまちまちです。

クオーツにもオーバーホールは必要?

機械式時計に比べ部品点数が少なく歯車もほとんど付いていないクオーツ(電池)時計も定期的なオーバーホールをおすすめします。アナログ時計(デジタル表示ではなく針で時刻を表示するタイプ)は歯車を使うので、定期的にオーバーホールをしないと油切れを起こします。

防水パッキン(裏蓋と本体のスキマのゴム)は2~3年で劣化するので、デジタル時計についても定期的にオーバーホールをしておくと長持ちします。とはいえデジタル表示の時計のオーバーホールはあまり見かけません。メンテナンスフリーを認識されています。

オーバーホールには何日くらい預ける?

シンプルな機能のもの(クオーツ、日付や曜日等表示、第二次時間帯表示等)で約1か月、複雑なもの(クロノグラフ、永久カレンダー等複雑機能)で約2~3か月ほどかかります。メーカーによってはシンプルな機能でも一部モデルについてはすべて日本代理店ではなく本国で作業するものもあるので、一概には言えません。

時計のオーバーホールは作業時間よりも動作チェックの時間を長く必要とします。作業後約2週間程は正確に動作するかのチェックに費やすため、どうしても時間がかかるのです。

オーバーホールはいくらいくらいかかるか

値段についても期間と同様にモデルによって大きく変わります。作業が簡単かそうでないかといった見方が指標になっていますので、機能がシンプルなモデルほど安く、複雑なものほど高くなる傾向にあります。

しかしそれは基本料金なので、交換が必要な部品があればその分が上乗せされます。なので、修理の代金を抑えるためにも定期的なオーバーホールによって機械の動きが良くなればそれだけ修理にかかる金額も抑えられます。トラブルがなくても3~5年に一度のオーバーホールをおすすめします。

最後に

時計の基本的なメンテナンスとしてオーバーホールについて解説しました。機械式時計で約3~5年、クオーツ時計(電波・ソーラー含む)で約4~6年に一度はオーバーホールを行い、ムーブメントの状態を一度健康にリセットするだけで時計は一生ものになります。

しかしオーバーホールをすれば何でも直るというわけではないので、普段からの使用で衝撃や水分等気をつけた上で期間が経ったので念入りにチェックするくらいの心持の方がいいかもしれません。