スイス時計ではなくドイツ時計?

時計の聖地は間違いなくスイスです。実際世界的に見ても時計の生産量やブランドの本社はほぼスイスです。対してドイツはものづくりの国ではあるものの東西分裂によって時計に力を入れるのが遅れました。しかし今でもマイスター制度(職人が弟子を取って技術を引き継いでいく教え方。日本の伝統工芸と同じです。)があるなどドイツは職人気質な人が多く、ビジネスとしてとらえられてしまったスイス時計とは時計に対する真摯さが違います。スイス時計よりもドイツ時計は”マジメ”なのです。

ドイツ時計はどんな特徴?

そんな”マジメ”なドイツ時計の特徴は非常にシンプルなつくり、デザインにあります。究極のシンプルさを追求する工業デザインの祖ともいえるデザイン学校”バウハウス”しかり、ドイツ時計の考え方は限りなく時計を”道具”として捉えています。大量生産しやすく専門知識を必要としないデザインの考え方だと非常に工業的な面と、代々受け継いできた一子相伝の技術によってつくられるような職人気質の面と両方を兼ね備えています。

ドイツ時計は人気?

スイス時計はフランスからの影響により時計を装飾品として考えています。結果ブランド品としての売り方を選び、世界中でも人気を集めました。対してドイツ時計は一見地味なデザインのものが多く、機能もシンプルです。時計を道具として捉えているので、煩雑な機能は無駄だと考えています。なのであまり大衆的ではない分爆発的な人気はありませんが、時計をしっかり見て買おうと考える人ほどドイツ時計のマジメな部分を気に入ります。スマホがあって時計が必須ではない現代だからこそこれから人気が出てくるといえます。

代表的なドイツ時計ブランド~A.Lange & Sohne~

数あるドイツ時計ブランドの中でも注目の3ブランドを紹介します。まずは元祖ドイツ時計である”A.Lange & Sohne”を紹介します。”A.Lange & Sohne”通称ランゲはシンプルで無骨で機能的な時計をドイツ時計らしさとして販売した最初のブランドと言われています。ブランドがスタートしたドイツ時計の聖地”グラスヒュッテ”には「ランゲ広場」があり、ドイツ国内でのランゲの格の高さがうかがえます。

代表的なドイツ時計ブランド~Wempe~

”Wempe”はドイツを中心に世界中に約30店舗ある高級時計宝飾店です。宝飾店としてだけでなくオリジナルの時計の製作・販売もしており、戦争前につくった時計の時刻をチェックしていたグラスヒュッテの天文台を買い取って工房にしています。またマリンクロノメーターと呼ばれる船舶用の時計を未だに製作し続けている世界でも珍しいメーカーの一つでもあります。もちろん品質にもこだわっており、ロレックス等のビッグブランドにもひけをとらないブランド力で質の高い機械を厳選して仕入れ、最高品質の時計を製作・販売しています。

代表的なドイツ時計ブランド~NOMOS~

NOMOSはドイツ時計の中でも小振りでシンプルなつくりかたの時計ブランドです。発表しているモデルの7割が時間しか表示しません。クロノグラフやムーンフェイズは一本も製作していません。壊れる可能性があるので、そういった機能は一切付けないようにしています。そんなストイックな考え方のNOMOSはグラスヒュッテで製作されていますが、デザインはベルリンの事務所で行います。それぞれの得意な分野、場所の特性を十分に活かしてつくられているNOMOSは的確な分業によってつくられる現代的な機械式時計ブランドです。

まとめ

スイス時計とは趣が違うドイツ時計は見る人によっては地味に映ります。しかしブランドが色濃く投影されていない分、着ける人によって色を変えるスキがあります。物が溢れてしまっている現代だからこそブランド品ではなく、しっかりと物を見て価値を知ることのできるドイツ時計。シンプルで懐古的でありながら、現代にマッチした特徴はスイス時計には出せない”味”です。ぜひ一生ものの時計を買うときにはスイス時計だけでなく、ドイツ時計も検討してみてはいかがでしょうか。